企業の不祥事は尽きないのか
ツケは数倍返しで回ってくる

 近年、国内外の企業の不祥事が目に余ります。経済が成熟して、モノやサービスが簡単に売れない時代になったためと報道されています。30数年前の三越百貨店の偽物騒動や社長による乱脈経営が発覚した事件が思い出されます。今年だけで大きく報道された企業不祥事は4件に上ります。昨年から今年初めにかけて紙面を賑したのは、14年の中国での賞味期限切れの鶏肉を原料に使用し、翌15年には異物混入が発覚した日本マクドナルド事件です。マクドナルドは、品質管理、社員教育、社会貢献など経営方針を掲げ、高度な食の安全を誇ってきた企業であり、他の企業に模範となるべく経営していたはずが、この事件後の15年1月の既存売上高は前年同月比38.6%減にまで落ち込み、今年6月まで20%以上のマイナスが続きました。子どもに危険が及ぶとなれば母親として怒りと嫌悪感により、マクドナルドは不買運動に見舞われたことになります。  
 続いて発覚したのが東芝の不適切会計問題。2008年度から利益のかさ上げが続けられ、累計額は1500億円を超えたとして、歴代3社長を含む5人に3億円の損害賠償を請求しました。その矢先に今度は東芝子会社の米原子力事業大手が1600億円の損失を出していたことが発覚したため、日米の株主による訴訟が広がるなど、経営環境が厳しさを増し、投資家、消費者や取引先、社会からの信頼を取り戻すことは難しいといえます。  
 そして、独フォルクスワーゲンのディーゼル車の排ガスデータの不正問題です。フォルクスワーゲンのブランドイメージは日本人にも強く、日経の調査で、安全性には関係ないとして9割のユーザーはフォルクスワーゲンを買い続けると回答していたが、10月の国内販売台数は前年同月比48%減という厳しい結果が出ました。  
 また、10月中旬に旭化成建材がくい打ちを行った横浜市都筑区のマンションの一棟が施工不良で隣の棟より約2センチ沈下し、傾いていることが判明しました。旭化成建材による杭打ちデータ偽装問題が公表されました。親会社である旭化成と三井不動産は、旭化成建材が過去10年で実施した3040件が該当し、その内1割の工事にデータ転用など不正があったと把握し、2004年以降の工事で、元請は約1100社に上り、現場管理者約50人が関わっていたと発表しました。その後、11月13日に調査報告があり、3040件の内2376件の調査が終了し、266件においてデータの流用等が確認され、施工データが存在しないなど不明物件が118件と発表しました。また、国土交通省の要請で優先的に調査した学校、医療・福祉施設の602件については、63件でデータの流用等が確認されたとしています。  
 その他、報道されている偽装、改ざん、水増し、やらせは分野を問わず発覚しています。それぞれの動機は、例えば、大阪府警で犯罪認知件数の統計を大幅に改ざんした動機として、犯罪全国最多の汚名を返上に向けた当時橋下知事が進めた施策のために良い結果を出すなど組織のあり方に問題があるようです。同じことが、JR北海道のレール検査データの改ざん問題、食材偽装、TV番組のやらせ等々数えたらきりがありません。  
 もともと日本人は、タテマエと本音を分けて考えることに慣れてしまっています。そして、20世紀まで日本社会は無競争と独占の安住の時代から、急に自由競争と市場原理、グローバル化の波に投げ入れられ、生き残るための改ざん、でっち上げ、やらせが続き、良くないことの罪悪感も薄れてしまっていると思います。また、日本人は上からの命令に背いて、自分の正しいことを主張する経験が少ないといえます。そして、失敗すれば上の者に責任を押し付けることができるという無意識の内に潜在的な甘えがあるということになります。上記の例では、すべての場合に経営者や管理者としてのトップの意識に責任はありますが、社会全体が大きなツケを後に回してでも、現在の利益を最大化するという傾向があります。当面の納期に間に合わす目先の得を優先してしまう近視眼的な考え方になっています。それは組織の日々の怠慢が招いていることです。消費者や顧客をないがしろにしたツケは数倍返しで回ってくると考えるべきです。

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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